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日替わりコメント写真集

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「じゅぽん」のつぶやき・『三話』

「大人の童話」「じゅぽんのつぶやき」
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第三話

前回までのあらすじ

「じゅぽん」という、「樹囁庵」に、出没してくる、動物一家の末息子。一家五匹の「狸」一家の話、人間の年でいうと12歳くらいの主人公が語る。

おじいちゃんは、人間の車に轢かれて、右足に大怪我を負い不自由な生活と年の所為で、次第に体が弱ってきた。親父は、最後の親孝行とばかりに、無理を承知で、じっちゃとばっちゃんの出会いの思い出深い、「クリノキサコ」に案内する。
そのころ、「クリノキサコ」と言うところに、「樹囁庵」が新築されたのでした。

第三話

 じっちゃんは、「あーあ、疲れたワイ。しばらく遠出もしていなかったからのー」「じゃが、今日はここへ来て、本当に良かった」「皆に迷惑かけたものじゃー」と、誰に言うとも無く、喜んでいた。不自由な右足をかばっての獣道の山下りで左足からは、血が滲んでいた。
 ばっちゃんとお袋は「だいじょぶかね。元気をお出し。昔のようにしゃんとしなされや」と、血の滲んだ個所へ、薬草を噛み砕いて、貼って上げていました。
 「ありがとう、ありがとう」と何度も、じっちゃんは、感謝の言葉を吐息の中で、口にしていました。
 「皆、はよ。餌場にお行き。わしは、ここで少し休んでおるけん」とじっちゃんは、皆に、手で追い払う仕草をしていました。
親父は、「分かった、そしたら、行ってくるけん。じっちゃんは、ここを動かれんで」というと、ボクたちを連れて、坂を降り始めました。

 じっちゃんの休んでる場所は、「樹囁庵」のすぐ上に、建てられているオレンジ色の小さく可愛い小屋があり、持ち主さんは、随分遠くにお住まいで、最近では、あまり使っていないところの床下でした。

 「樹囁庵」の裏庭に着きました。
親父は、いつもするように、顎をしゃくって、ボクたちに餌の在りかを教えてくれました。
妹も喜んで、餌にありつきましたが、お袋とばっちゃんは、怖々と近づくばかりで、すぐには、食べようとしませんでした。
そこには、大きな栗の木が倒されて、転がっていて、それをくりぬいて、餌が置けるようにしていました。
ここの主人の手作りでしょう。そしてその中には、白い御飯と魚の骨などが、沢山載っていました。どうやら、奥さんが、ボクたちのくることを知って、置いていてくれたようです。親父は、二、三日まえから、来ていたのを、みられていたようです。
 腹一杯に、久しぶりの人様の残り物にありつけました。
「さあ、もうぼつぼつ帰ろうか」親父は、お腹一杯になって眠そうにしている妹の手を引いて、「樹囁庵」から出て行きました。勿論皆も跡を追ったのでした。

 再び、オレンジキャビンまで帰ってみると、じっちゃんは、元の場所でぐったりしていました。
「さあ、じっちゃん、帰ろうか」と親父が言うと、じっちゃんは、「みんなは、帰ってくれ。わしは、今晩は、ここに泊まろうわい」と言い出しました。「いけん。そんな身体で、ここに置いとくことは、できるもんかね」と、お袋と、ばっちゃんは、一も二もなく反対しました。
親父は、しばらく黙って考えこんでいました。この身体で、また険しい山道を「桂ケ森」まで歩いて帰ることは、他の四人も、ひどく危険なことになるだろうということは、明らかでした。
親父は、「よし、分かった。じっちゃんは、ココで今晩はお休み」「そして、明日の晩、若い衆を集めて、迎えに来るけん」「そうしょう、うん、それがええ」と、自分に納得させているようでした。
「なら、わたしも、ここに残らい」と、ばっちゃんが言い出しました。
親父は、「そんなことは、いかん。明日の助っ人が、倍かかってしまうでのー」「ばっちゃんは、今晩の内に、帰らんと・・・・・」後は、「じっちゃん、下手に動くなよ」と念をおしておいて、「さあ、行くぞ」ともうずんずん先を歩いていました。

で、この続きは、第四話でつぶやくことにいたします。



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